前回は漫画『ルックバック』についてでしたが、というかあいだが空いてもう卒業シーズンも終わりですね。
これから、皆さんにとって楽しい新年度になりますように(202503)。ということで、今回は映画『アバウトタイム』について綴っていきます。
映画『アバウトタイム』(感想・考察)

ここからは一部に作品のネタバレになるような内容を含みます。そのため、鑑賞後に読んでいただくことを推奨します。
1番好きな場面
映画『アバウトタイム』面白かったです!
あるとき、主人公のティムが父親にタイムトラベルの醍醐味を教えてもらいます。そして、彼がそれを実践する場面が1番好きですね。
まず、普通に1日を過ごす。その日は何も良いことがないような、つまらないような、そんな1日。
同僚が上司に叱られるのを黙って聞いている。店員さんの顔も見ずに買い物を済ませる。急いで次の仕事場へ向かう。何とかこなすタスク。夫婦の会話もなく就寝。
タイムトラベルその日に戻る。もうすでにわかっていることが繰り返される中で、新たに気づくことがある。
仕事にはもっとユーモアがあってもいいのでは?店員さんは笑顔だったね。この場所は始めてきた場所、なんて素敵なんだ!仕事の達成感を味わい、仕事仲間への感謝を忘れない。パートナーとのコミュニケーションってやっぱり最高だ。
同じことが起こる1日でも、心持ちや言動でまったく違う1日になる。
そんなティムの2回目の今日を見ていると、こう思えます。
自身が起こった出来事に対してどんな選択をするかで、変わることって沢山あるよなと。
恋は右側、家族は左?
気になったのは、登場人物の配置ですね。主人公のティムが恋人のメアリーと結婚するまでは、大体というかほぼ女性が右側、ティムは左側の位置をとっていたように思います。
ただ家族は別なんですね。家族はティムが右側で家族が左っていうのはあるんです。これは結構意図して作られてるんじゃないのかなって気もしました。
ティムとメアリー。結婚を機に他人だったこの2人の運命が交差するような、そういう風に感じさせる効果もあったのではないかと考えられます。
あとはお父さんと主人公ティムの位置。大体お父さんが奥側にいて、ティムが手前にいるような感じ。縦の関係ですね。
要は手前と奥で現在と過去の関係になっているようなそういう感じもしました。
2人だけが持っている特殊能力をそのような見せ方で表現しているような。
そんな2人の立ち位置が、あることをきっかけに変わるのはとてもグッときましたよね。
隠されたたとえ
メタファーという、隠された例えなのかと思う描写が多かった気がします。
例えば、映画で出てくるテニスと卓球、どちらもボールが行ったり来たりするスポーツ。
これはティムやティムのお父さんが時間を行ったり来たりしてるのに少し重なる気もしました。
さらにこれも後で言及するんですが、デズモンドというおじさんがいるんですけど、その人はテニスをティムと友人や妹たちがしている中で、
審判として、ちょうど真ん中の位置にいるんですね。それが何かこの作品の大事なテーマを象徴しているような感じもしました。
もう一つのメタファーは、ティムの奥さんメアリーが、パーティーか何かあるんだったかな?
それで、どの服を着ていくかずっと迷うんですね、あれにしようかこれにしようか、もう何度も何度も。
でも結局選んだのは1番最初に着た服だった。
何度も何度も過去に戻ってベストな選択を選ぼうとするティムだけど、
実は過去に戻る前の1番最初にした選択、それが最もしっくりくるものだっていうのもあるんじゃないかみたいな。
そうした思いを表現したくてこのシーンがあったのかなという気もします。
今を生きる。
1番気になった登場人物はおじのデズモンドですね。彼は過去のことをしょっちゅう忘れてしまうんです。
逆に言うと今を生きてる。今、目の前で起こってることに集中している。
これはいつでも過去に行くことができるティムやお父さんにとっては、最終的にとても好ましい態度のように思えたのではないでしょうか。
だからティムのお父さんは、自分の好きな3人の人物のうちの1人に、このデスモンドおじさんをあげていたのではないかなと思います。
いつでも過去に帰れると思って、今をないがしろにして生きるよりも、ただ現在に思いを馳せることが大事ですね。
次に鑑賞するなら
映画『ビッグフィッシュ』
映画『アバウトタイム』は現在と過去の往還がストーリーの主。ならば、こちらはホントとウソのそれでしょうか。