映画「みんな元気」2(考察)もしも家族のかたちが変わってしまったら

音声版

もしも家族のかたちが変わってしまったら

前回までは父親目線で見てきたんですが、これが子どもたちに焦点を当てて見てみるとまた違った印象を持つ映画になるなあと思いました。

結局これまでこの父子っていうのは、母親を介してコミュニケーションを取ることが多かった。でも、母親の死をきっかけとして、実家に寄りつかなくなった子どもたちにお父さんが直接会いに行きます。

そこで父親はこれまで良い面しか受け取っていなかった子供たちの実際の暮らしぶりを目の当たりにします。もちろんみんなある種の問題を抱えていることも。

で、子どもたちも子どもたちで、その時に父親に今まで言えなかった本音を話すことになります。こういった様子を見ていてわかるのは、子供たちもみんな別に父親が嫌いっていうわけじゃないということ。

ただ苦手意識を持っている。なんで苦手かっていうと、子どもたちからするとこの父親は、一方的だしちょっと押し付けがましいし、だからプレッシャーをかけられてるような感じがするし、話を聞いてくれないし、でもじゃあお父さんのこと嫌いかっていったらそうではないですね。ただどうやって一緒にいていいか、一緒にいて何を話していいか、どう接していいかがわからない。

このような父親の旅での子どもたちとの関わり合いをきっかけとして、これから母親•妻を亡くした人たちの新しい家族関係が始まる話、というふうに考えるとすっと腑に落ちました。

あの息子デイビットに起こった悲劇により父親も悔い改めましたから、今までは本音が言えない親子関係だったのが、これからは本音が言える親子関係に。父親だけじゃなく、子どもたちにも焦点を当ててみると、今から家族になっていく、新しい繋がりを作っていく、出発の物語なんだと考えることができました。

最後の場面、家族みんなで食卓を囲みながら、父親のフランクは亡き妻と息子に、心の中で、こう語りかけます。生前、フランクの妻がフランクにしていたように。

「みんな元気だ(Everybody’s fine)」(映画『みんな元気』)

©️MIRAMAX

以前のフランクは、なんでも押し付けがましく家族に発言するのかと思ってましたが、もうすぐ最後の場面。家族みんなで夕食の準備をしていたとき、彼は子ども達に向かって、母さんのことは愛してた。料理もうまかった。だけど七面鳥だけは毎年焼き過ぎてた。それを母さんに言ったことは一度もなかったけど。というようなことを伝えていて、なんだか微笑ましかったです。

次に鑑賞するなら

楽曲 OAU「帰り道」

おすすめポイント
  • この家族にもこんな帰り道があったのかなと想像できる。

漫画「羅川真里茂『赤ちゃんと僕』白泉社」

ひとこと作品紹介

ママのいないパパと、小学生と赤ちゃんの息子2人の日常を描いたハートフルドラマ。

おすすめポイント
  • 妻・母がいないという共通点から、また違った家族の営みを見ることができる。
  • 笑いあり、涙あり、シリアスあり、多様な感情に訴えかけてくる。