目次
作品紹介とおすすめ
ひとこと作品紹介
高校生の佐山うららと老婦人の市野井雪の2人が、BL漫画という同じ「好き」から友情を育む物語。
こんな方に○×かも
人と人とが交流することで生まれる心の温かさに触れたい〇岡田惠和の脚本が好き〇主人公が好きなもののために行動する話が好き〇
感想と考察
ここからは一部に作品のネタバレになるような内容を含みます。そのため、鑑賞後に読んでいただくことを推奨します。
感想
面白かったです!特に前半がもう最高でした。高校生のうららさんと老婦人の雪さんの2人が出会って、雪さんが、こういう友達が欲しかったと打ち明けた場面であったり、やりたいことにいろいろ悩んでるうららさんに、雪さんが背中を押すような疑問を投げかける場面であったり、同じ「好き」を持った2人の関係にグッとくるものがありましたね。
話の見せ方で印象に残っているのは、各登場人物それぞれの後ろ姿です。そこで、後ろ姿が映ったときに見るポイントが3つあることに気づきました。
1つ目は、その人の後ろ姿から何か思いや心情を感じること。
2つ目は、その後ろ姿を見せている人が、何を見ているのかということ。
3つ目は、その後ろ姿を見ている人の有無と、いるなら、どういう思いで見ているのか考えてみるということ。
例えば、最初に漫画家のコメダ優先生が出てきたときの後ろ姿。その先には東京ビッグサイトがあったこと。雪さんの自宅で、雪さんの後ろ姿を見ているうららさんの眼差しがあったこと。
などなど、一体登場人物は、何を見ているのか、何を考えているのか、どんな気持ちでいるのかと、その後ろ姿から思いを巡らすのが楽しかったです。
青春の後ろ姿を人はみな忘れてしまうのか?
「青春の後ろ姿を人はみな忘れてしまう」
ユーミンこと荒井由美の『あの日に帰りたい』という曲の一節です(1975)。
後ろ姿が印象的な映画だったので、見ているうちにこのフレーズが頭に浮かびました。さて、この命題はイエス(真)なのかどうなのか。この映画の中では答えが明らかにされています。イエスかノーか。正解はどちらでしょう?
正解は、ノーです。
場面は、雪さんの自宅の縁側。うららさんが漫画を描いています。その後ろ姿を雪さんが見たときに、子供の頃、今のうららさんと同じように、雪さんもまた縁側で漫画を描いていたことを思い出します。そして、その姿がうららさんと横並びになって見えている。淡い光に包まれながら。ここはすごく良い場面です。なので、改めて正解は、「青春の後ろ姿を人はみな忘れてしま」わないでした。
歌詞の続きに、「あの頃のわたしに戻ってあなたに会いたい」という一節がありますが、雪さんにはそんな必要もなくて、今の雪さんのままで、うららさんと、あの頃のような気持ちで青春を謳歌しています。
この映画のキャッチコピーについて
この映画のキャッチコピーに、「最初の青春、最後の青春」というものがあります。最初の青春はいいとして、最後の青春はうーんとなってしまいます。
なぜかというと、娘さんと同居するかということで遠くに行ってしまった雪さんですが、もしかしたらその同居先で、新しいときめきを見つけたり、そのつながりでまた新しい友達ができたり、まだまだそういうことだってあるかもしれないじゃないですか。
それを最後の青春って言ってしまうと、そこで終わってしまう気がして、なにか少し寂しい感じがしませんか。僕は寂しい感じがしました。なのでキャッチコピーは、「歳の差58歳の青春ストーリー」のようなものでも良かったんじゃないのかなあと、個人的には思います。
以下に、次に鑑賞するならこういうのがいいかも?をまとめてありますので、よかったらご覧くださいませ。
次に鑑賞するなら
漫画:鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』KADOKAWA
おすすめポイント
- 本作の原作を楽しめる。
- 本作とは違った展開を読める。
曲:Sunday May Club「少年漫画」
おすすめポイント
- 劇中の漫画の登場人物たちを歌っているようにも聴こえる。