目次
狂児に起こったことの推測
刺青のわけ
ここからは一部に作品のネタバレになるような内容を含みます。そのため、鑑賞後に読んでいただくことを推奨します。
じゃああの腕の刺青は何なのか。カラオケ大会の罰ゲームじゃないの?っていうところで、これはもしかすると組を抜けるためのケジメで組長から入れられたのではと考えてみました。
本来であればもっと別の形のケジメの付け方があるけど、あの刺青を入れる程度で組を抜けられた。これがさっきのマサノリとの会話に繋がってくるんですね。親父も歳をとった。つまり、昔はこんなケジメの付け方じゃ組をやめることができなかった。そういうニュアンスだったんじゃないのかなと想像しました。
ヤクザを辞めようと思った理由
そう考えると、じゃあなぜ狂児はヤクザを辞めようと思ったのか、ですよね。これは大きく2つ考えられます。1つは、今の生き方を狂児自身が歯車が狂ったと言っていること。だからもう1度まともな道に戻ろうと。そしてもう1つはやはり聡実くんの存在でしょう。刑務所の中で狂児は自身の過去と聡実くんとの日々を振り返り、新しく人生をやり直そう思った。
一方、そうとは知らない組の面々、新しい名刺も用意し、出所の日、狂児を迎えに行く。しかし彼は組を辞めるという。そこで全てを察した組長がケジメとして、狂児の腕にあの刺青を掘った。
そして狂児は街に居られなくなり、拠点を東京へ。そんなときに空港で聡実くんを見かけ、『カラオケ行こ!』の最後の場面へと繋がっていく。以下に時系列順で箇条書きにしてまとめてみます。
これまでの経緯とまとめ
- 狂児、傷害罪で刑務所に入る
- 狂児、自身の過去や聡実くんとの日々に思いをはせる。BGMは郷ひろみ「よろしく哀愁」。
- 狂児、ヤクザをやめることを決意。
- 組の面々、狂児の出所の日に新しい名刺を携え出迎える。
- 狂児、ヤクザをやめることを伝える。
- 組長、ケジメとして狂児の腕にあの刺青を彫る。
- 狂児、拠点を東京に移すことを決意。
- 狂児、空港で聡実くんと再会する。
こういう風に想像してみると、『ファミレス行こ。』での狂児の言動に対する違和感が解消されたような気がしました。どうなんでしょう。実際のところは、これからの展開でわかると思うので、早く続きが読みたいですね!
『カラオケ行こ!』の魅力
『カラオケ行こ!』の1番大きい変化
唐突ですが、『カラオケ行こ!』の1番大きい変化とは何でしょうか。これやっぱり変声期を迎えた聡実くんが、歌うことに不安を持っていた聡実くんが、あの最後のカラオケ大会で紅を歌うというところが大きい変化かなと考えられます。
ではなぜ、あの場面であんな状況(周りはヤクザだらけ)で、聡実くんは歌うことができたのでしょうか。
それはやはり、個性的なキャラクターである狂児、といろいろな時間を過ごしたからこそだと思います。紅を歌うまでは、聡実君も泣いたり、泣いてばかりでしたもんねやくざの人たちの前では。それがあんなに一生懸命歌えたのはなぜなのかというと、やっぱりこれ狂児という存在が大きいし、彼に対する思いというのが聡実くんの中でとても大きくなっていたというのがわかります。
思慕は恐怖に勝る
つまり最後の歌の場面は、ただ紅を歌った、変声期の不安・過渡期を乗り越えたっていうだけじゃなくて、その乗り越えるだけの強い気持ち、狂児に対する強い気持ちが聡実くんの中で芽生えていたことが伝わる。その思いが、ヤクザに囲まれた、自分の声に不安がある状況でも紅を歌いあげるという行動に繋がっていきます。誰かを思う気持ちが、恐怖を乗り越えるというとても尊い場面。
そして、その行動を起こすまでの聡実くんと狂児、2人の魅力的な交流っていうのが全編を通して描かれている。そこが『カラオケ行こ!』の面白いところであり、読者が惹かれるところだったのではないでしょうか?
今回は、狂児と聡実くんについて自分の気になったところを中心に綴ってみました。以下に「次に鑑賞するなら」を並べてありますので、よかったらご覧くださいませ。
次に鑑賞するなら
Audible版:三浦しをん『墨のゆらめき』
ひとこと作品紹介
小さなホテルに勤める続力(つづき・ちから)と町で書道教室を営む遠田薫(とおだ・かおる)の可笑しくも温かな交流を描いたヒューマンドラマ。
こんな方におすすめかも
- 漫画の2人の関係にほっこりした
- ユーモアのある話に浸りたい
- ジーンとしたい
※上記リンク先から「墨のゆらめき」で検索すると、サンプルが聴けます。
【単話】ファミレス行こ。 番外篇 (ビームコミックス) Kindle版
おすすめポイント
- コミックス上巻未収録の話!
楽曲:郷ひろみ「よろしく哀愁」
おすすめポイント
- 本作で使用されていても違和感が無さそう。