狂児と聡実くんについて『カラオケ行こ!』『ファミレス行こ。』(考察1)


今回は、『夢中さ、きみに。 (ビームコミックス) 』や『女の園の星 1 (フィールコミックス)』でも有名な和山やまさんの上記2作品について扱います。 

コミックス表紙の比較ー『カラオケ行こ!』『ファミレス行こ。』

©YAMA WAYAMA 2020
©YAMA WAYAMA 2023

時間と場所について

まず、いつのことが描かれているか。『カラオケ行こ!』(以下:カラオケ)は夜。そして『ファミレス行こ。』(以下:ファミレス)は日中です。場所は、カラオケのほうはネオン街。それに対してファミレスのほうはまぁ普通の街、ビジネス街とまでは言わないけど、商店街のような。何とか会計事務所みたいなのもある。

登場人物について

登場人物。カラオケのほうは狂児が微笑みながら、聡実くんの方を見て傘を差し出している。一方、聡実くんは狂児を見上げながら絶望してるような顔に見えなくもない。狂児の服装は雨のせいかスーツの色が濃い。紺のスーツ。聡実くんは制服。聡実くんは半袖で、狂児はもうスーツをびしっと決めてる感じ。

人物の配置。ファミレスは聡実くんが前にいて、その斜め後ろに狂児がいる。視線は聡実くんが前。狂児が横を向いていて、狂児から向かって左を見ているよう。表情は2人ともなんだろう、無表情。服装は聡実くんが黒いTシャツ。リバーサイドって書いてある。井上陽水「ホテルリバーサイド」が浮かぶ。あれは恋愛の歌っぽいですよね。川岸という意味だとすると、こちら側とあちら側、此岸と彼岸があるから聡実くんの揺れる思いを表しているともいえなくもないかも。狂児はスーツの上を脱いで肩にかけている。2人ともほとんど上半身だけで下半身は見えてないような状況。

タイトルとまとめ

最後にタイトルを見るとカラオケ行こ!は狂児のセリフでしょう。それに対してファミレス行こ。は聡実くんのセリフなのかな。

以上、二つの表紙を比べてみましたが、カラオケとファミレスでテイストがまったく違うことがわかりますね。これが一体何を意味するのか。二人の置かれている状況や心境、関係性の変化など、それぞれ注目しながら今後の展開を見ていきたいですね。

なぜ狂児は3年以上も音信不通だったのか?

ここからは一部に作品のネタバレになるような内容を含みます。そのため、鑑賞後に読んでいただくことを推奨します。

気になる3つの点

カラオケの最後の場面で、狂児があの日から音信不通だった理由を、これ以上自分のせいで聡実くんの青春を潰してはいけないからと言っていました。果たしてその理由は本当なのでしょうか。

なんでそう思ったかというと、ファミレスで3つ気になるところがあったからです。1つは宇佐純子との会話でこの世界?どの世界?と狂児が言っていたこと。2つ目は組長の息子マサノリと会話をしているときに、親父の様子を聞かれ狂児が親父は歳をとったよとちょっと意味ありげな言い方をして、すぐ話題を変えたこと。3つ目はコミックスの表紙の帯に狂児ついて書かれた部分。「あの夏を共に過ごしたヤクザ・狂児」というふうになっていったこと。

3つ目を少し説明すると、ヤクザ「の」狂児であれば、今もヤクザだっていうふうに断定ができるんですが、それがヤクザ「・」狂児と、点になることでヤクザという言葉は「あの夏を共に過ごした」を受けるけど、その後の「狂児」に係っていくかどうかは微妙なんですね。だからこれが過去のことなのか現在のことなのか少しあやふやにしてるような印象を受けました。

これら3つから、もしかしたら組と何かあったのか、もっと言うともう狂児は組を辞めてるのではないか、じゃあどういういきさつでって考えたときに思い浮かんだのが、カラオケの終盤の出来事です。

『カラオケ行こ!』終盤の事件

聡実くんが合唱の大会に行く途中で事故を見かけるんですけど、それは組を抜けた男が狂児の車に突っ込んだとその後わかるんですが、狂児は全然無事で、その組員の男をボコボコにしたと発言。それに加えて警察は車の中に残されていたものから成田狂児という身元も把握していると、これ狂児捕まらないのかな傷害容疑とか、仮にもし捕まっていたとしたら、最後の場面、空港で聡実くんには、なぜ3年間も音信不通だったか、青春を邪魔するわけには潰すわけにはいかないっていうふうに狂児は言ってましたけど、本当は刑務所に入っていたのではないか、だから会えなかった。

じゃああのカラオケ大会の罰ゲームで彫られたという腕の刺青は何なのか?というところですよね。続きは次回の記事に綴っていきたいと思います!