前回は漫画『ふつうの軽音部』についてでしたが、今回は映画『きみの色』について綴っていきます。あらすじ等については、映画.comや公式サイトをご覧ください。それではいきましょう。
ここからは一部に作品のネタバレになるような内容を含みます。そのため、鑑賞後に読んでいただくことを推奨します。
目次
感想

映画『きみの色』面白かったです。
1番印象に残っているのは、予告編でも少し映っていたトツ子の踊るシーンです。
建物の中にいたトツ子が、どこからともなく流れてくる音楽に導かれるように中庭へ向かい、そこで踊り出す──。
空は晴れていて、あたり一面が明るく、庭には色とりどりの花が咲き誇っています。
あのシーンは、本当に素晴らしかったです。
とても「祝福」を感じるような、そんな場面でした。
考察
ルイときみが、本当の気持ちを伝えられた理由

この作品では、「ルイ」と「きみ」というキャラクターが、それぞれ大切な人に本当の気持ちを伝えることができるようになります。
最初は、2人ともそれができずにいました。
でも、トツ子を含めた3人でのバンド活動を通じて、最終的には──
・ルイは、自分のお母さんに
・きみは、自分のおばあちゃんに
本当のことや気持ちを伝えることができるようになりました。
なぜ2人は、その一歩を踏み出せたのでしょうか?
それはきっと、**「自分の好きなことを続けて、好きな人たちと時間を共有した」**ことが大きかったのではないかと思います。
そして、お互いがお互いに本当の気持ちを打ち明け合った。 そんな経験が、心の中の何かを変えるきっかけになったのではないでしょうか。
自分自身を見失っていた「トツ子」の変化

さて、トツの場合は他の2人とは少し異なり、
・ 自分の「色(個性)」がわからない
・好きだったバレエを辞めてしまった
・自分自身のことが、なんとなく見えなくなってしまっている
そんな風に、自分を見失っているような状態でした。
最初は、先生から告解の提案を受けますが、そのときの彼女は「必要ない」と断っています。
しかし、それが変わったのは、あの夜。
3人で過ごした、あの特別な場所で、トツ子は自分の本当の気持ちを、ルイとキミの2人に打ち明けます。
3人が胸の内を明かしたシーンは、とても心に残りました。
大切な人にこそ言えない気持ちがある
まず、この作品を通して感じたのは、大切な人だからこそ、素直な気持ちを伝えられないこともあるということ。
そして、そういう気持ちは、時に「大切な人」とは別の人に打ち明けられることもある、ということです。
特に今回は、同世代の3人──
互いのことを思いやりながら友情を育んでいくその過程が、それぞれの悩みや葛藤を乗り越える力になっていたように思います。
ライブシーンが他と違って見えた理由

ライブシーンも、とても印象的でした。
これまでに見たアニメーションのライブシーンとは、少し違った質感があったように思います。
なぜそう感じたのかを考えたときに、「挿入されるカットの種類」に違いがあることに気づきました。
普通のアニメでは、ライブ中に過去の回想シーンやドラマチックな出来事が挿入されて、物語の「エモさ」を盛り上げる演出がされることが多いですよね。
でも、『きみの色』では、そうした回想ではなく、風景描写が多く挟まれていたのが印象的でした。
それはきっと、物語を強調するためというよりも、観ている人それぞれが自分の心の中に何かを感じてほしい──そんな意図も込められていたのではないでしょうか。
最後に
『きみの色』は、自分の気持ちをうまく言えない表現できない登場人物たちが、バンド活動を通じて少しずつ変わっていく物語でした。
特別なことが起きるわけではなく、でも確実に何かが変わっていく。
そのかけがえのない変化が、とても美しく描かれていて、観終わったあとにじんわりと心に残る作品だったように思います。
次に鑑賞するなら
映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』
バンドを組む映画で浮かんだのがこの作品です。